清酒は米を主原料とし、日本で古来より作られているいわば「国酒」であり、「日本酒」とも称されます。

“米・米麹・水、或いは米・米麹・水・その他政令で定められた物質(醸造用アルコール、糖類など)を原料とし、発酵させて、こしたもの”として定義されている清酒(日本酒)。

製造工程(概略)を記しましたので、アルコール生成の原理(概略)と共にご覧くださいませ。

備考:挿絵は作業内容をご理解頂く為、簡略化し、また昔ながらのやり方で描いたものもあります。


1.精米

米の主成分はデンプンであり、米の内部に行くほどデンプンの含有率は高くなります。

一方たんぱく質や脂質は米の外表部に相対的に多く含まれています。
たんぱく質はお酒の味又は香りの元となる成分ですが、あまり多いとお酒の味がクドクなってしまいます。また脂肪分は酒造りには有害な成分です。
精米は酒造りであまり多くあっては困る成分、或いは有害な成分を取り除き、お酒造りに最重要なデンプンの含有率を高める作業です。

弊社の精米歩合(白米の玄米に対する重量割合)

吟醸酒:40%
純米酒・本醸造酒:60%

普通酒:70%


2.洗米・浸漬

洗米により米の表面に付着している糠(たんぱく質、脂質分等を多く含む)を取り除きます。

洗米した白米は蒸しの前日に浸漬し一定量の水分を吸わせます。(浸漬により30〜35%重量が増す)

”洗米”をした米は”蒸し”の下準備ために浸漬をします。

浸漬時間は米の種類又は精米歩合により大幅に異なります。(普通酒用の一般米の場合は一昼夜近く、吟醸用の酒造好適米の場合十数分程度)


3.蒸し・冷却

浸漬した米は水切りし、50〜60分蒸した後 所定温度まで冷却し、酒母・醪(もろみ)の掛米、または麹米として使用されます。

蒸しにより米のデンプンの結晶がほぐされ(α化)、掛米の場合は麹の酵素の作用をうけ糖化されやすくなり、麹米の場合は麹菌がお米の内部に入りやすくなります。


4.麹造り

麹室は30〜35℃程度の室温に保たれており、所定の温度まで冷却された蒸米を引き込んだ後、約2昼夜かけ麹を造ります。

(酒造蔵には”一麹 二酉元 三造り”という言葉があり、これはお酒造りにおいて麹が一番大事という意味です。)

酒母・醪の仕込みにおいて、麹に含まれる糖化酵素は蒸米のデンプンをブドウ糖に分解し、また麹に含まれているビタミン・アミノ酸等は酵母の増殖を助けます。


5.酒母仕込

酒母とは醪で健全なアルコール発酵させるための”元” あるいは”種”とでもいうもので、酒造製造に適した優良な酵母を純粋・大量に培養します。

また酒母には醪の初期段階での雑菌汚染防止の為に多量の乳酸が含まれています。

現在一般的に行われている普通速醸酒母は、酒母タンクに水・乳酸・酵母・麹・蒸米仕込み、適切な温度管理の下、約2週間かけて完成します。(吟醸酒の場合には高温糖化酒母という酒母をたてます)


6.醪(もろみ)仕込み

醪の仕込は4日間にわたり3回にわけ行います。

・1日目(初添え仕込)

仕込みタンクに酒母を移し、麹・水を投入し水麹を作った後、蒸米を投入・攪拌し所定の温度に仕上げます。

・2日目(踊り)

仕込を休み酵母の増殖を進めます。

・3日目(仲仕込)

麹・水を投入し水麹を作った後、蒸米を投入・攪拌し所定の温度に仕上げます。

・4日目(留仕込)

麹・水を投入し水麹を作った後、蒸米を投入・攪拌し所定の温度に仕上げます。

仕込む物量は初添/仲仕込/留仕込と徐々に増やしていきますが(その比率は大体1:2:3)、これは1度に大量に仕込むのではなく徐々に仕込み量を増やしてゆくことにより酵母を安全・確実に増やしてゆくという安全醸造上の見地からです。

清酒醪では適切な品温管理の下で、麹の酵素による蒸米のデンプンの糖化と酵母によるアルコール発酵を同時・並行的に進め(平行複発酵)、普通酒の醪の場合、留仕込後20日程度で熟成します。(吟醸酒の場合は30日程度で熟成させます)


7.上槽(じょうそう)

醪を1昼夜 搾り機にかけ圧搾し、清酒と酒粕に分離します。
また右図のように袋に醪を入れて吊るし、ポタポタと落ちてきた酒をとる”袋絞り”という方法もあります。


以上の作業を上槽といい、この時点で初めて酒税法上の清酒となります。


8.おり引き・ろ過

・おり引き
上槽直後の清酒には不溶解性物質が混じり濁っています。この濁りを滓(おり)といいます。

上槽後10日程度静置し、滓を沈殿させ上澄みを抜き取る作業をおり引きといいます。
・ろ過

おり引きした上澄み酒にはまだ微細な粒子(不必要な香味・着色物質)が含まれているので、珪藻土・炭素などのろ過助剤を用いて ろ過を行い、香気・着色を整えます。


9.火入れ

滓引き・ろ過された清酒は、一定期間静置し熟成させた後62〜65℃に加熱し殺菌します。

火入れにより生酒に残存していた酵母も失活します。


10.貯蔵・出荷

火入れした清酒は貯蔵タンクに入れ、出荷まで保管されます。この間に清酒はさらに熟成します。

生酒の場合は火入れを行わず冷蔵庫内に貯蔵し、お酒のフレッシュさを保ちます。
貯蔵された清酒は需要に応じて瓶詰めされ出荷されます。